最近では犬の寿命も延び、元気な高齢犬も多くいます。でも歳をとると、いろいろな病気になったり、ちょっとしたことで体調を崩すきっかけになってしまうこともあります。飼い主さんも気づきやすい症状の一つが軟便や下痢です。体力の低下にもつながることから、成犬以上に早期、かつ適切な対応が求められます。

歳をとるにつれて若いころよりも下痢をしやすくなる主な原因は、消化能力の低下です。栄養の吸収能力も落ちるので、毛づやが悪くなったりしてしまいます。
歳をとり消化能力が低下すると、食事の内容や量や回数が変わることで下痢になってしまうことがあるのです。また、脂肪分が多い食事は消化に時間がかかるので、下痢になりやすくなります。下痢や軟便になることが多い体質の犬(特に老犬)は脂肪分が制限された食事を、回数を増やし、一回の量を減して与えると負担が少なくなり、下痢をしにくくなると言われています。(一般的に年齢のステージに合わせて作られている総合栄養食は、成犬用よりもシニア用の食事の方が脂肪分・蛋白質は制限されていますので、7歳を超えたら徐々にシニア用の食事にシフトすることが体にとっても負担が少ないでしょう。)

どの程度様子を見ていいのでしょうか

さて、下痢になった場合はどの程度様子を見てよいかどうかは、飼い主さんは誰しも悩むところだと思います。元気があり、一過性の下痢ですぐ治まるようであれば様子を見ても良いでしょう。でも、元気がない場合はもちろんのこと、2日以上下痢が継続する場合は動物病院へ行って診察を受けた方が良いかもしれません。また嘔吐を伴う下痢の場合は(ほかの症状も含め)早急に動物病院へ行きましょう。
下痢は体力を消耗するだけでなく、脱水もどんどん進んでしまいます。そして、下痢が続くと腸内細菌のバランスも崩れる可能性があります。結局、すぐに治る場合は問題ありませんが、継続しているとどんどん悪循環に陥り治りにくくなる可能性もあります。
そして下痢をすることには、何らかの原因が潜んでいることもありますので、飼い主さんの判断で様子を見るのではなく獣医師の判断を仰ぎましょう。

では一過性の下痢とは、どうやって判断するのでしょうか。
例えば元気、食欲はあるものの、軟便や下痢をした場合(症状は下痢だけの時)に、その後ご飯を抜いてお腹を休めます。これで下痢が治まるようであれば、一過性のものと見なしても良いでしょう。その後の食事はいきない通常のものに戻すのではなく、まず量をいつもの三分の一程度の量与えてみます。その後しばらく様子をみて、問題がないようであれば、次はいつもの量の半分程度にするなど、少し量を増やしましょう。お湯でふやかして与えることで、多少消化をしやすくしたり、水分を取らせるように心掛けてみることもおすすめします。アレルギーがない犬の場合は、お米(でんぷん)やお肉(タンパク質)キャベツ(食物繊維)をおかゆのように煮たものを与えてもいいでしょう。ただ、量の加減には気をつけてお腹に負担を与えないようにしてください。

下痢の種類

下痢には原因のある場所によって大腸性の下痢と小腸性の下痢に分類されます。大腸性の下痢は何度もトイレに行って、排便の姿勢をとるのが特徴です。小腸性の下痢はあまり回数が変わらず、便がゆるくなることが多いです。これらはどこに異常があって下痢がおこっているのかを判断する材料になります。
(下痢の時に限らず、排便の回数や色をチェックすることは重要です。習慣としてチェックするようにしましょう。)

黒い便は出血のサイン?

便の色は、真っ黒な場合でも異常ということをご存じですか。真っ黒な便は胃や小腸などの消化器からの出血の際に出ることがあるのです。出血というと、真っ赤な血が便につくイメージがある方が多いと思いますが、これは大腸からの出血の場合です。(何度も下痢を繰り返しているうちに、粘膜が炎症をおこしてただれて少量の血が便に付着することもあります。) このように色の変化を見ることもとても重要なのです。

病院へ行ったらどんな検査をするでしょうか

病院へ行く際には犬の便を持っていき、糞便検査をしてもらいましょう。どの程度のやわらかさなのか獣医師にも見てもらえますし、目には見えてなくとも、血が出ていないか、細菌が異常に増えていないか、寄生虫がいないかなど、様々なことがわかります。
そして、問診の際に、いつから下痢がはじまったのか、一日に何回ほど下痢をするのか、その前に何らかのイベントはなかったのか、元気、食欲はないのか、嘔吐はないのかなどの症状をお話しましょう。獣医師も飼い主さんの意見なしに、検査結果だけを見て診断を下すことは不可能といっても過言ではありません。
重症度にもよりますが、必要に応じて血液検査やレントゲン検査、超音波検査を行うことをおすすめします。獣医師の判断を仰ぎましょう。

考えられる病気

では下痢の原因として考えられる主な病気をあげていきます。
・食事の変化
これは一番最初に書いたように、いつもと違う食事を与えた際に下痢をしてしまう場合があるという内容です。お腹を少し休めることと、食事はふやかして少量を一日5回など頻回にして与えましょう。(かかりつけの獣医師による指示があった際にはそれに従いましょう)

ストレス

ペットホテルや動物病院、旅行など普段と異なる生活環境になったときに下痢をしてしまう犬もいます。疲れやストレスが原因で、一過性でいつもの状態に戻れば問題ないですが、高齢犬の場合それがきっかけで体調を崩すこともありますので、気をつけましょう。

ウイルス・細菌の感染

人間と同じようにウイルスや細菌に感染して下痢をすることもあります。感染経路は様々で断定をすることはできません。下痢だけでなく嘔吐をすることもあります。症状も程度によって異なりますが、このような下痢は一過性ですぐ治るようなことはありませんので、動物病院で診断を受け、適切な治療を受けましょう。嘔吐・下痢が続いていて、脱水の心配がある時は点滴などで体が失った水分を補ってもらうことも重要です。またきちんとワクチンの接種を受けることで、症状が軽くて済むこともありますので、毎年一回定期的なワクチン接種を心がけましょう。

寄生虫

寄生虫はあまり成犬では問題になることはありませんが、子犬や高齢犬のような低い免疫の状態の犬は症状が重くなることがあります。犬が多く集まる場所で感染することがありますので、十分気をつけましょう。

以下は基本的に一過性で治ることのない症状の重い下痢を起こす原因の病気をいくつかあげていきます。

腫瘍

だんだん歳をとると誰もが恐れるのが『がん』です。老犬の下痢や嘔吐を引き起こす原因の一つです。下痢や吐き気などの症状が出始めるのは突然かもしれませんが、その前に少し食欲が減る、最近少し元気がない、といった症状は少しずつ出ることも多いにあります。ちょうど夏に差し掛かっていたりすると、『夏バテかなぁ』と思ってしまいますが、実は病気が原因だったということも実際にありますので、小さい変化でも病院に行って検査をすることをおすすめします。
基本的には、治療をしないと治るものではありません。獣医師と相談の上、どのように治療を進めていくか判断しましょう。

IBD

IBDというとあまり耳にしない病気かもしれませんが、炎症性腸疾患という病気で消化器に免疫の異常が起こることで下痢や嘔吐を引き起こす病気です。放置しておくと、どんどん痩せていってしまいます。この病気は一過性で治るものではなく、体質として付き合っていかなくてはいけない病気です。年齢に限らず発症します。診断は他の病気をある程度除外した上で、内視鏡検査や開腹手術で病理組織検査をしないと診断できません。

膵炎

膵炎は比較的犬では頻度の高い病気で、激しい嘔吐と下痢を起こします。とてもお腹をいたがることが特徴なので、飼い主さんも病院に犬をすぐに連れていこうと判断されるのが一般的かもしれません。この病気は人間と同様で、早急に治療を開始することが大切で、重症度によっては死の危険性もある病気です。

ここに挙げた下痢を引き起こす病気は、ごく一部でしかありません。どの病気でも初めはわかりにくい症状から始まるものです。初めは『何かいつもと違う気がする』という程度のものかも知れません。でも放っておくと重症化して命に関わってしまうものばかりです。特に高齢犬は要注意です。何より体力がなくなってしまうので、治療も早いうちに開始したいからです。こう考えると高齢犬の年に1回や半年に1回の健康診断はとても重要だということが分かっていただけると思います。

検査をした上で特に体に問題はなく、老犬に見られる消化能力の低下による下痢と診断された場合は、動物病院で取り扱われている処方食を与えることも効果的だと思います。ホームセンターなどで市販されている食事は一般食なので、いくらシニア用の食事として消化に配慮されたものでも、処方食とは異なります。お値段はもちろん一般食よりは高価になってしまいますが、ぜひ一度獣医師に相談してみるといいでしょう。

(最後になりましたが、歳をとって便秘体質になった場合の対処法もお書きしておきます。便秘がちになる体質の犬は、もしかしたら水分量の摂取量が減っている可能性もあるので、水分が摂取しやすいようにお湯でふやかした食事を与えたり、缶詰を与えて出来るだけ水分の摂取を促すことが重要かもしれません。)

便の状態や尿の回数、食欲などはわかりやすいですが、犬の健康な時の体重を日頃からチェックする習慣はとても大事です。わざわざ病院に行かなくても家の体重計で十分です。何も気づく症状がなくても、体重が増減するときは何らかの異常があることが多いです。獣医師はワクチンの時には元気な状態の犬には会うことができますが、あくまでも病院で緊張している状態です。元気な時の犬の状態は飼い主さんが一番知っているので、普段からしっかりと観察をして状態を把握することが一番の病気の早期発見につながると思います。

いざという時にしっかり治療するために

以上のように犬の食欲不振は何らかの病気が関わっていることがあります。治療の中には高額になるものが多く、また国の医療費負担は犬に関してはありませんので、
愛犬のための貯蓄など、費用たいさくを進めておくことも重要です。また最近では犬用のペット保険も人気になっています。掛け捨てが基本とはいえ、高額な治療費を負担してくれるのでもしもの時に備えて加入する人が増えているんです。こちらで紹介されているような安い犬の保険もあるので、検討して見てはいかがでしょうか。